介護施設で高齢者の介護を行うときに気にしたいポイントはいくつかありますが、見落としてはならないのが色彩です。色彩は高齢者の心を左右してしまうので、高齢者の精神状態だけでなく介護のしやすさにも関わってきます。色をうまく使うと、高齢者が安定した状態でいられて介護もスムーズに進みます。
では、なぜ色彩がそれほど高齢者に影響するのでしょうか。その理由は、色が光の波長の一部だからです。
光が物に当たって目に入ると、脳がエネルギーの違う波長を感知して、色として認識します。高齢者は、水晶体が加齢で変色する上に、瞳孔が狭まって光が目に入りにくくなるため、光の量が足りずに色を認識しにくくなるのです。また、白内障などの眼の病気があると、見えにくさに拍車がかかります。
色が見えにくいことのマイナス点は、注意力が低下するため、段差で躓いたり頭をぶつけたりすることです。また、光を認識する大脳の視覚野は、感情を司る大脳辺縁系とも関わりがあるので、精神的な影響も大きくなります。そのため、橙系の色で穏やかになる、青い色で気持ちが静まるなど、色によって機嫌や態度が変わってくることがあるのです。介護士はこうした介護における色彩の影響を理解しておく必要があるでしょう。
高齢者を介護する時には、安全性が大事なので、高齢者が見えやすい色を適切な場所に取り入れていく必要があります。それにプラスして、高齢者に落ち着いて過ごしてもらうことも大切です。部屋によって配色を工夫するなどして、安定した精神状態に導いていくことを心がけましょう。